病理専門医試験問題解説 2022(Ⅰ-31)解剖について

問題と解答

・死体解剖資格を持たない医師でも事前に保健所に届けて許可を受ければ病理解剖ができる

答えは○です。

毎年のように類似の問題が出題されています。死体解剖保存法を確認していきましょう。

e-Gov法令検索Wikipediaのリンクをどうぞ。試験に出そうなところは強調しています。

死体解剖保存法について

対象:死体(妊娠四月以上の死胎を含む)

目的:死体の解剖、保存と死因調査により公衆衛生の向上をはかり、医学(歯学含む)の教育および研究に資すること

解剖をするためには:あらかじめ保健所長の許可を得ておく必要がある。下記に該当する場合も可能

解剖が可能な場合

・死体解剖資格を有する者が解剖をする場合

解剖学、病理学、法医学の教授または准教授が解剖する場合

・第八条で規定される解剖をする場合(監察医による解剖)

刑事訴訟法の第百二十九条、第百六十八条第一項又は第二百二十五条第一項の規定により解剖する場合(犯罪の捜査を目的にする)

食品衛生法、第六十四条第一項又は第二項の規定により解剖する場合(食品、添加物、器具又は容器包装に起因する(疑いも可)疾病で死亡した者の死体)

検疫法、第十三条第二項の規定により解剖する場合(船舶等に乗ってきた者の解剖)

警察等が取り扱う死体の死因又は身元の調査等に関する法律、第六条第一項の規定により解剖する場合(警察などが取り扱う死体について、死因や身元を明らかにする必要がある時にする解剖)

解剖には遺族の同意が原則として必要(例外あり)

解剖には原則として遺族の同意が必要ですが、例外も多くあります。

病理解剖関連では、死体解剖保存法第七条の「二人以上の医師(うち一人は歯科医師でも可)が診療中であつた患者が死亡した場合において、主治の医師を含む二人以上の診療中の医師又は歯科医師がその死因を明らかにするため特にその解剖の必要を認め、かつ、その遺族の所在が不明であり、又は遺族が遠隔の地に居住する等の事由により遺族の諾否の判明するのを待つていてはその解剖の目的がほとんど達せられないことが明らかな場合」が例外です。

病理解剖でこのルールが適応される場面は殆どないですが、「遺族の同意が必ず必要である」はバツであることがわかります。

解剖は解剖室で行う(例外あり)

解剖は解剖室で行うのが原則ですが、保健所長に許可を受ければ解剖室以外でも解剖ができます(死体解剖保存法第九条)。

病理解剖を始めてから異状がわかったら

病理解剖の場合、犯罪と関係がなさそうなことを主治医に確認してから解剖を行うのが通常と思いますが、解剖で犯罪と関係のある異状があると認めたときは、二十四時間以内に、警察署長に届け出る必要があります(死体解剖保存法第十一条)

取り出した臓器やパラフィンブロック、標本の取り扱いは

病理解剖では、臓器を固定し切り出し、パラフィン包埋ブロックを作成します。標本化しなかった臓器は一定期間を経て荼毘に付されますが、ほかは半永久的に保管します。ですが、たとえ希少な疾患であっても、遺族の求めがあった場合には、返還する必要があります(死体解剖保存法第十八条)。

解剖承諾書のサンプル

病理学会に、解剖の承諾書のサンプルが掲示してあります。同意に際して、署名をすれば押印は不要、というのが過去に出題されています。