病理専門医試験問題解説 2022 Ⅰ型-48 p53の免疫染色の評価について

問題文と解答

p53蛋白の免疫組織化学法において、癌細胞核がびまん性陰性を示す場合にはTP53遺伝子に変異があることが推測される 正答はマルです。

免疫染色におけるp53の発現パターン

p53の免疫染色の染色パターンは、以下の4つと言われています。TP53遺伝子変異を推測するのは、野生型以外の3つです。

・野生型

・過剰発現

・完全欠失(null type)

・細胞質発現

p53発現パターンの評価

野生型は陽性細胞と陰性細胞が混在しているもので、その比率は問いません。陽性細胞がとても多くても、陰性細胞が混在していれば野生型です(注意!たとえば脳腫瘍では陽性細胞率で判定します。10%以上が陽性であれば異常と判断します)

過剰発現は判断が付きやすいと思います。腫瘍細胞すべての核に強い発現をみます。野生型の説明にもある通り、1個でも陰性の細胞があってはダメです。実務では、固定不良による染色性の低下や染色不良(染色中になにかの液がかからなかった領域があるなど)に注意が必要で、悩むことがあります。

完全欠失は、腫瘍細胞に1個も陽性細胞がないパターンです。p53染色プロトコルは様々ありますが、非腫瘍の野生型の発現率がそもそも低いと、完全欠失としてよいか、困ることがあります。また、生検検体や病変が小さい場合は判断が難しいかもしれません。完全欠失を正しく判定するために、野生型の陽性細胞の比率を高めるような染色プロトコルもあります(Kobel M, Ronnett BM, Singh N, et al. Interpretation of P53 immunohistochemistry in endometrial carcinomas: toward increased reproducibility. Int J Gynecol Pathol. 2019,38:S123–31.のFIG. 5, #1, 2に相当。DO7のクローンにlinkerを使います。)。

また、これまではp53の核発現について触れてきましたが、細胞質発現(局在異常)も遺伝子変異を推測するパターンのようです(Rabban JT, Garg K, Ladwig NR, Zaloudek CJ, Devine WP. Cytoplasmic Pattern p53 Immunoexpression in Pelvic and Endometrial Carcinomas With TP53 Mutation Involving Nuclear Localization Domains: An Uncommon But Potential Diagnostic Pitfall With Clinical Implications. Am J Surg Pathol. 2021 Nov 1;45(11):1441-1451.)。

その他(免疫染色で局在異常が特徴的な腫瘍)

ほか、通常の染色パターンから逸脱するもので有名な腫瘍は、甲状腺の硝子化索状腫瘍があり、Ki-67 (MIB-1)があたかもβ-cateninやE-cadherinのように、細胞膜に局在するのが特徴です。病理医歴はまだまだ浅いですが、みたことがないです。