はじめに
細胞診に用いる染色の代表に、パパニコロウ染色とギムザ染色があります。それぞれ標本の作製方法や見え方が異なりますので(ご存知のことと思いますが)、まとめていきましょう。
問題と解答
I型-44 パパニコロウ染色の工程にヘマトキシリン色素による染色は含まれない。答えはバツです。
I型-45 細胞診のギムザ染色では異染性(メタクロマジー)の観察が可能である。答えはマルです。
パパニコロウ染色について
1928年に細胞診について報告した医学者、ゲオルギオス・パパニコロウ(George Nicolaus Papanicolaou、1883年 – 1962年)の名を取って「パパニコロウ染色」と呼ぶ(Wikipediaより)。ギリシャの医師だそうです。
検体を塗抹したスライドガラスを95%アルコールで湿固定(乾燥させてはいけない)のあと、以下の染色液を使って染色していきます。細胞診標本でホルマリンは使いません。
使用する染色液は、以下のとおりです。
核を染色する:ヘマトキシリン
細胞質を染色する:オレンジG、エオジンY、ライトグリーンSF
(分子量はオレンジGが小さく、ライトグリーンSFが大きい。エオジンYとライトグリーンが含まれた染色液がEA-50です。この順番に染色していきます)
HE染色標本で使用する、ヘマトキシリン、エオジンの文字がありますね。また、パパニコロウ染色の特徴・利点として、角化を検出するのが得意です。
ギムザ染色について
ギムザ染色を確認していきます。グスタフ・フォン・ギムザ(Gustav von Giemsa、1867年 – 1948年)の名を取って「ギムザ染色」と呼ぶ。1904年に、ドイツ、ハンブルグの船員熱帯病病院に勤務していたグスタフ・ギムザ(Gustav Giemsa)が、アズールⅡ(アズールBとメチレンブルーの混合物と考えられる)とエオシンをグリセロールで安定化させた原液を使用するギムザ染色を発表した。本法は染色液の安定性にすぐれ、再現性のある染色が可能であり、今日でも標準的な染色法として全世界で広く用いられている(Wikipediaより)。
ギムザ染色は、検体を塗抹したガラスを、ドライヤーなどで急速に風乾し(冷風)、100%メタノールに1-3分程度固定し、また乾燥させます。
ギムザ染色の特殊性その1 ロマノフスキー効果
メチレンブルー、アズールB、エオジンがギムザ染色液に含まれています。ギムザ染色は異染性(メタクロマジー)の観察が可能です。また、前2者は青い色素で、エオジンは赤い色素です。当然青や赤に染まるのですが、ギムザ染色では、ロマノフスキー効果という、元の色素の赤色・青色以外のさまざまな色調が現れます。たとえば、中性に近い水溶液中で、ギムザ染色では核が紫色に染色されます。
ギムザ染色の特殊性その2 メタクロマジー
メタクロマジー(異染性):組織や細胞成分が色素本来の色調と異なる染色性を示す現象のことを言います。ギムザ染色では、基底膜物質や間質性粘液が強い異染性を示し桃色から赤紫色を呈します。原理(機序)は諸説あるようです、申し訳ありませんが解説できるほどよくわかりませんでした。
上記の基底膜物質や間質性粘液を有するものとしては、婦人科領域の明細胞癌、唾液腺の多形腺腫、筋上皮腫、腺様嚢胞癌、基底細胞腺腫(癌)、上皮筋上皮癌、肥満細胞などがあげられます。悪性中皮腫は弱いメタクロマジーを示すそうです。