- 診療報酬改定
- 組織診断料、細胞診断料、悪性腫瘍病理組織標本加算
- 病理診断を専ら担当する常勤病理医がいることで出来る加算
- 悪性腫瘍手術でとれる点数は(病理診断加算1 or 2が取れる場合)
- 悪性腫瘍病理組織標本加算を取らない場合
- 病理診断とテレワーク
- デジタル病理診断対応のスキャナー
- デジタル病理診断に対応していないスキャナーの活用方法は?
- 標本作製料
- セルブロックによる算定が可能な場合
- 免疫染色について
- 免疫染色の4種加算について
- 術中迅速病理組織標本作製について
- 迅速細胞診について
- 細胞診について
- 遺伝子検索について
- 免疫チェックポイント阻害薬関連について
- 病理診断報告書の確認漏れを防ぐために
- 電子顕微鏡標本について
- 常勤病理医がいる病理診断科があることで得られる診療報酬(の一部)
- 非常勤でも良いので病理医の勤務の実態が必要な手術(の一部)
診療報酬改定
診療報酬の改定は2年毎に行われており、直近は令和4年です。病理についても診療報酬の見直しが行われています。また、診療報酬に関して病理専門医試験のI型問題(マルバツを問う)でほぼ毎年出題されています。たかが一問、されど一問です。覚えるべき項目は多いですが、しっかり得点しましょう。
また、この診療報酬は常に最新の動向を確認する必要があります。たとえば、2020年にはⅠ-31で「GISTの診断に際し4種以上の抗体を用いた免疫染色をした場合は、1,600点の算定が可能である」が○として出題されていますが、令和2年度の診療報酬改定で適応疾患の拡大(原発不明癌と原発性脳腫瘍が追加)に伴い1,600から1,200に減点されています。
WEB上で診療報酬について確認する場合は、しろぼんネットでみることができます。病理診断にかかわるものはこちらです。
組織診断料、細胞診断料、悪性腫瘍病理組織標本加算
組織診断料:520点(算定は月1回)
・原発性悪性腫瘍の手術検体の診断を行った場合は、悪性腫瘍病理組織標本加算として150点を加算する(算定要件:病理診断科を標榜、専ら病理診断を担当した経験を7年以上有する医師が1名以上いること)。
細胞診断料:200点(算定は月1回)
病理診断を専ら担当する常勤病理医がいることで出来る加算
病理診断加算1:組織診断120点、細胞診断60点(病理診断を専ら担当する常勤の医師が1名以上、担当経験5年以上)
病理診断加算2:組織診断320点、細胞診断160点(病理診断を専ら担当する常勤の医師が2名以上、それぞれ、担当経験7年以上と5年以上)
悪性腫瘍手術でとれる点数は(病理診断加算1 or 2が取れる場合)
以上、悪性腫瘍手術の組織診断料の合算は、520+150+320 or 120=990 or 790点となる。
悪性腫瘍病理組織標本加算を取らない場合
悪性腫瘍病理組織標本加算を取らない場合で以下に該当するものは、病理判断料として130点を算定できる。
・婦人科細胞診
・婦人科以外の細胞診で、細胞診断料を算定しない場合(医師がみていないもの)
・組織診断料を算定しなかった場合(病院以外、たとえば検査センターなどでの検査報告などがこれにあたる)
病理診断とテレワーク
加算1, 2の届け出をしている場合、当該施設で週3日以上かつ週24時間以上勤務している場合は、ICTを活用した自宅などでのデジタル病理診断(ガラス不可)が可能であり、加算1, 2を算定できる。ただし、加算1, 2の算定要因として届けている常勤病理医は自宅などでの病理診断はできない。
デジタル病理診断対応のスキャナー
通常の病理診断を標本送付やデジタル画像で行うものは、委託医療機関から書類(別紙44)の提出が義務つけられている。また、デジタル画像のみでの診断には、クラスⅡの薬事承認を経たスキャナー(病理ホールスライド画像診断補助装置)が必要。
病理ホールスライド診断補助装置は、病理スライドの取り込み、保存や表示ができる(スキャン済みのガラスが破棄できる)。
クラスⅡのスキャナーは、2023年4月8日時点で3社4件ある(PMDA、医薬品医療機器総合機構の医療機器情報検索より。検索ボックスに診断補助装置と入力してみてください)。浜松ホトニクス、フィリップス、ライカマイクロシステムズからでています。
※遠隔の術中迅速病理診断(元来のテレパソ)の場合は、スライドスキャナーに制限はない(迅速診断後に永久標本(ガラス)による確認がもともと必須である)
デジタル病理診断に対応していないスキャナーの活用方法は?
従来のクラスⅡ承認を受けていないスキャナーを有効活用する場合は、後日ガラススライドでの確認をすれば良いようです。
標本作製料
病理組織標本作製:1臓器につき860点(3臓器まで)
セルブロックも860点(1部位につき)
※手術検体でたくさんブロック作っても860点、深切切片をどれだけ作っても860点です。
※1臓器について(以下は同じ臓器と判断される)
・気管支と肺
・胃と十二指腸
・上行結腸、横行結腸、下行結腸
→盲腸、S状結腸、直腸はそれぞれ1臓器
・子宮頸部と子宮体部
セルブロックによる算定が可能な場合
セルブロックによる算定が可能な場合は、悪性中皮腫を疑う場合もしくは、「肺悪性腫瘍、胃癌、大腸癌、卵巣癌もしくは悪性リンパ腫を疑う場合」で、組織検体の採取が困難な場合に限る。乳癌の癌性胸水や、原発不明癌の癌性胸水は現時点では算定できない。
免疫染色について
ER:720点、PgR:690点(ER, PgRを同一月に行った場合は、一方の加算のみ、そして180点を加算する。つまり、ER分の720点+180点で900点分加算できる)
HER2:690点
EGFR:690点
CCR4:10,000点
ALK:2,700点(非小細胞肺癌、悪性リンパ腫のみ)
CD30:400点(悪性リンパ腫のみ、HQリンカーを用いる)
その他:1臓器につき400点
免疫染色の4種加算について
・その他に関して、診断のために4種類以上の抗体を用いた免疫染色を行った場合、1,200点を加算する(4種加算)。
・4種加算が可能な場合は、原発不明癌、原発性脳腫瘍、悪性リンパ腫、悪性中皮腫、肺癌(腺癌、扁平上皮癌)、GIST、慢性腎炎、内分泌腫瘍、軟部腫瘍、皮膚血管炎、慢性腎炎、水疱症、悪性黒色腫、筋ジストロフィー、筋炎
術中迅速病理組織標本作製について
術中迅速病理組織標本:1手術につき1,990点
迅速細胞診について
迅速細胞診:1手術ないし1検査につき450点
迅速細胞診は、手術、気管支鏡検査(超音波気管支鏡下穿刺吸引生検)、内視鏡検査(膵癌、胃粘膜下腫瘍疑いの超音波内視鏡下穿刺吸引生検)の途中において、胸腹水およびリンパ節穿刺検体について算定可能である。※腫瘍そのものからの穿刺は厳密には算定不可。現在申し立て中のようです。
細胞診について
細胞診:婦人科は150点、それ以外は190点
液状化細胞診について、婦人科は36点加算可能。それ以外は既存の標本で再検が必要と判断した場合、液状化細胞診標本を残検体から作成し再評価することで85点加算できる。
遺伝子検索について
HER2:2,700点(免疫染色併用の場合は3,050点)
ALK:6,520点
免疫チェックポイント阻害薬関連について
PD-L1:2,700点
PD-L1のクローンについて
22C3の対応臓器:乳癌、肺癌、食道癌、頭頚部癌
22-8:肺癌、胃癌、食道癌、頭頚部癌
SP142:乳癌、肺癌
SP263:肺癌
MSI検査:リンチ症候群の診断補助目的は2,700点、免疫チェックポイント阻害薬の適応確認は2,500点
MMR(MLH1, PMS2, MSH2, MSH6)の免疫染色:2,700点
病理診断報告書の確認漏れを防ぐために
報告書管理体制加算:退院時1回、7点
病理診断報告書の確認漏れなどの対策を講じる。具体的には、病理診断を担当する医師を含む報告書確認対策チームが設置されており、報告書確認実施状況の評価をするカンファレンスが月一回程度開催されている必要がある(非対面可)
問題点:退院時ということは、入院例に限定されており外来患者を対象としていないのが問題、入院例であっても、検査入院などでは退院までに報告が出ない場合もある。疑義照会中のようです。
電子顕微鏡標本について
電子顕微鏡病理組織標本作製:2000点
腎組織、内分泌臓器の機能性腫瘍、異所性ホルモン産生腫瘍、軟部組織悪性腫瘍、脂質蓄積症やグリコーゲン蓄積症(ゴーシェ病など)、心筋症に対する心筋生検など
常勤病理医がいる病理診断科があることで得られる診療報酬(の一部)
・報告書管理体制加算:退院時1回、7点
・腹腔鏡下リンパ節郭清術(子宮体癌に限る):診断管理加算2届出施設において可
非常勤でも良いので病理医の勤務の実態が必要な手術(の一部)
・センチネルリンパ節生検
・皮膚悪性腫瘍切除術(センチネルリンパ節加算を算定する場合)
・頭蓋内腫瘍摘出術(原発性悪性脳腫瘍光線力学療法加算を算定する場合)
・乳腺悪性腫瘍手術(乳輪温存乳房切除術)
・腹腔鏡下胆嚢悪性腫瘍手術
・腹腔鏡下肝切除術
・腹腔鏡下膀胱悪性腫瘍手術
・腹腔鏡下前立腺悪性腫瘍手術
・角結膜悪性腫瘍切除手術など多数
常勤病理医を2名以上病院に擁することで、様々な診療報酬を最大限算定することができます。また、スキャナーがあれば半在宅(完全ではありませんが)での勤務が実現可能です。