病理専門医試験問題2022年Ⅰ型-50 迅速診断の検体提出について

問題と解答

迅速組織診断用の検体は、十分量の生理食塩水に浸して提出するよう依頼する。答えはバツです。

正答率0.99です。多くの病理医にとって常識と思いますが、1.00でないのはとてもマズイと思います。生理食塩水に浸したガーゼを固く絞ったもので包んで、乾燥を避けて提出する。が正しいと思います。

迅速診断と通常の標本作成過程は大きく異なる

迅速診断用の標本は通常のホルマリン固定パラフィン包埋で作成する標本とは異なり、凍結して薄切後に固定をします。通常は固定してから薄切するので、順序が逆ですね。

迅速診断用の標本作成過程を確認していきましょう

検体の提出:生理食塩水で湿らせたガーゼでつつみ、乾燥を避け提出する

標本ができるまで:

  1. OCT(optimal cutting temperature)コンパウンドに包埋し、
  2. 液体窒素イソペンタンあるいはドライアイスアセトンなどで急速冷凍する。
  3. クリオスタットで薄切後(通常よりも厚めです)、ガラスあるいはフィルム(川本法)にとり、
  4. それを固定する。固定液は施設により様々ですが、アルコール(エタノールあるいはメタノール)、ホルマリン、酢酸の混合液を使うことが多いようです。
  5. HE染色を行う。

これで2022年のI型文章問題が終わりました。過去問は解答も公開されていますが、医療制度が変わると正答も変わります。年度が古いものほど解答を鵜呑みにせず、かならず裏をとりましょう。

補足 迅速診断の適応を当問題が医師国家試験でも出題されています

117F31で迅速診断の適応が問われています。術中迅速診断の適応や、検索が難しい検体など整理して記載していますので、確認してみてください。