病理専門医試験2021年I型-44から47, 弾性線維染色、HER2、β-catenin、PD-L1免疫染色の判定

I-44 ビクトリア青染色は組織中のヘモジデリンの検出に有用である。

答えはバツです。ヘモジデリンをみるためには、ベルリン青染色を行います。HE染色でヘモジデリン顆粒は茶色く見えますが、ベルリン青染色で青く染まります。ビクトリア青は弾性線維染色の一つです。HE染色との重染色を施すことが可能で、ルーチンでの有用性が述べられています(堤寛ライブラリーより、https://pathos223.com/)。

特殊染色と観察可能な構造を整理しておきましょう。染色手順やどのような液を使うかまで問われていませんが、特定の構造が何色を示すかぐらいは問われます。静脈侵襲を見られるような弾性線維染色はどれか、あるいは、HE染色標本で見た特定の構造を鑑別するにはどのような染色をしていくのがよいか、というような実践的な物も良いと思います。例、褐色色素顆粒をみたときの鑑別

・静脈侵襲を見られるような弾性線維染色(EVG, AZAN, MT, VB, EM)

a. Elastica van Gieson (EVG) 染色:レゾルシンフクシン液、鉄ヘマトキシリン液、ワンギーソン液を使います。弾性線維が黒(紫)色に、膠原線維は赤く、筋や細胞質が黄色、核は黒褐色に染まります。実際の染色を見ていきましょう。大腸癌の脈管侵襲をみるために行った染色です。写真では、粘膜下層~筋層が見えています。

b. AZAN染色:アゾカルミン、アニリン青、オレンジGを使います。膠原線維は青く、細網線維は明るい青、核は濃い赤(か、ざん)に染まります。

c. Masson Trichrome染色:鉄ヘマトキシリン、ポンソーキシリジン、酸フクシン、アニリン青を使います。核がく(トリクローム)、細胞質が赤く、膠原線維が青く染まります。

d. Victoria blue染色:ビクトリア青染色液を使います。弾性線維の他、HBs抗原を染めます(ともに青)。ロダニン、ルベアン、オルセイン染色と同じく銅(関連蛋白)の証明ができる染色でもあるようです(ビクトリア青ではこれも青)。染色自体が簡便であるため、HE染色と重染色を施し、(大腸癌の)静脈侵襲をみるのに便利ですよ、と紹介されている記事をよく見ます。

e. Elastica Masson染色:レゾルシンフクシン、鉄ヘマトキシリン、オレンジG、ライトグリーンを使います。弾性線維が黒、膠原線維が緑、細胞質が赤っぽい褐色、赤血球は赤、核が黒く染まります。胆嚢癌を例にHE染色と並べて提示しますが、コントラストが良く、かつ形態の観察が比較的容易です。

I-45 胃癌のHER2免疫染色の判定においては、管腔面側の染色性の有無が重要視される。

答えはバツです。HER2抗体薬は乳癌、胃癌、大腸癌、唾液腺癌で使用が可能です(遺伝子パネル検査、エキスパートパネルで適応になる場合もあると思いますが)。それぞれで判定法が異なり、また生検や手術検体でも判定法が異なります。

胃癌は、乳癌とは異なり細胞膜全周の発現ではなく、側方ないし側方+基底膜側の発現をみます。ですので管腔面側の発現をみるのは誤りです。

ちなみに、手術検体では、上記発現を示す腫瘍細胞が10%以上あることが前提で、生検検体では腫瘍細胞割合ではなく、上記発現を示す5個以上の癌細胞クラスターがあるかでみていきます。

詳しくは病理専門医試験問題解説 (2022年Ⅰ型46) HER2染色についてで触れています。乳癌・胃癌HER2病理診断ガイドライン(第2版)が金原出版より出ています。

I-46 CTNNB1遺伝子変異を有する腫瘍細胞では、β-cateninの核内集積がしばしば観察される。

答えはマルです。サーモフィッシャーサイエンティフィックの記事に、【いまさら聞けないがんの基礎 5】Wnt/β-カテニン シグナル伝達経路とは?と題してβcateninが関わるWNTシグナル経路について解説された記事があります。β-cateninというタンパク質をコードする遺伝子がCTNNB1です。β-cateninはシグナルがオンのときは核内に移行し転写因子のコアクチベーターとして機能します。オフのときは核内に移行することがなく、細胞質においてユビキチン化(分解)されます。β-catenin(CTNNB1)の異常自体によって分解されずに蓄積し核へ移行することがいわれています。

また、β-cateninを分解する複合体にAPCがあります。APCの変異の頻度が高い大腸癌ではβ-cateninの核内蓄積が高頻度で見られます。大腸癌の肺転移と形態的に類似する点で問題となる腸型肺癌との鑑別に有用(絶対ではないですが)だとする報告があります(大腸癌の肺転移はβ-catenin核内発現あり、腸型肺癌はなし)。それますが、ほかにCDH-17, SATB2も有用とされています。

I-47 PD-L1免疫染色におけるCombined Positive Score (CPS) は、全腫瘍細胞に対する腫瘍細胞と免疫細胞を含んだPD-L1陽性細胞数の割合である。

答えはマルです。PD-L1の抗体には複数のクローンがあり、クローンごとに適応臓器やスコアの出し方が異なります。それらをすべて暗記する必要はないのだと思いますし、だからこそ問題文のような問い方をしているのだと思います。クローンと適応臓器はこちらで触れています。測定方法は、

1. 腫瘍細胞の発現割合を見るTPS(リンクはMSD、肺癌の22C3に関して)

2. がん細胞がある領域で、がん細胞の総数中のがん細胞+リンパ球+マクロファージの総数でみるCPS(リンクはMSD, 乳癌の22C3に関して)

などが知られています。

たとえばクローン22C3に関して、TPSでみるのは肺癌で、食道癌や頭頚部癌、乳癌はCPSでみます。

ほか、クローンSP142に関して、肺癌はTC(腫瘍細胞)とIC(炎症細胞)を別個にみます。

それぞれのクローンで対応する臓器や使える免疫チェックポイント阻害薬、判定方法が異なり、また適応追加や拡大も日々変化しています。

いずれにせよ、PD-L1発現の測定法を確認するには、自分で一次情報を確認するのが望ましいです。自施設で判定しているのであれば、製薬会社や抗体販売会社から判定ガイドや講習をうけるのが最も確実でしょう。超最新でなければ、ガイドラインも有用です。肺癌患者におけるPD-L1検査の手引き(日本肺癌学会)がweb上で閲覧でき、クローンごとの測定法について解説があります。

試験本番は参照する資料が一切ないので、「組織像を見て免疫チェックポイント阻害薬が適応かどうか診断しなさい」みたいな問題がもし出たら、ちょっと酷だと思います。専門医試験に臨むには、いろんな測定方法(TPS, CPS, TC+IC)があるなあぐらいで良いと思います。

Take home messages

複数の弾性線維染色の特徴(なにが何色に染まるのか)を整理しておこう

胃癌のHER2発現は側方あるいは側方+基底膜側でみる

β-cateninをコードする遺伝子はCTNNB1である

PD-L1発現の確認は、クローンや臓器、使用薬物で様々だが、以下の測定法がある。

  1. 腫瘍細胞のみ(tumor proportion score, TPS)
  2. 腫瘍細胞と炎症性細胞を合わせる(combined positive score, CPS)
  3. 腫瘍細胞と炎症性細胞を別個にみる(tumor cells, TC and tumor-infiltrating immune cells, IC)