I-34 感染症法について
I-34 感染症法第 12 条に定める感染症届出義務は病理解剖の際にも準用され,届出対象の感染症により死亡したことが判明した場合には届出を行う義務がある。
感染症法第12条をみていきましょう。e-Gov法令検索で、目的の法令を確認できます。感染症法第12条は、第三章 感染症に関する情報の収集及び公表の1個目にあります。第十二条は、医師は~中略~保健所長を経由して都道府県知事に届け出なければなりません。条文を解剖で検索をかけてもヒットしません。解剖で判明した感染症が例外であるわけではないので、正答でしょう。
1-4類感染症と5類感染症の一部(侵襲性髄膜炎菌感染症、麻疹と風疹)、新型インフルエンザ等感染症はただちに届け出が必要で、5類の残りは7日以内の届け出が必要です。最新の情報は、厚生労働省ホームページの感染症法に基づく医師の届け出のお願いから確認できます。
I-35 保険医療機関間の連携病理診断(いわゆるテレパソ以外)
I-35 保険医療機関間の連携による病理診断では,委託側が自施設で病理標本を作製できることが実施可能要件となっている。
診療報酬に関する問題です。診療報酬改定は2年毎に行われており、直近は令和4年です。今度は令和6年に改定予定ですので、専門医試験前には改定の内容をチェックしておきましょう。
問題に関して、平成28年の診療報酬改定前までは、病理医がいない施設で病理組織診断を依頼する場合、病理標本は委託する側で作製する必要がありました(技師の存在が必須でもあった)。そして、厳密には診断ではなく判断料の算定しかできませんでした。
改定後は、病理医がいる保険医療機関(受託側)に、標本だけでなく標本になる前の検体、あるいはデジタル画像(これら3つをまとめて標本等とする)の送付が可能になりました。委託側の技師は、5年以上の経験を有する病理標本作成が可能な常勤のものが1名以上配置されていることが望ましいとの表記になり、必須ではなくなりました。私見ですが、デジタル画像を扱うということはテレパソロジーによる術中迅速診断も行うだろうと思いますので、やはり標本作成可能な常勤技師の存在は大きいと思います。依頼側から届ける様式に、様式79の2があります。記載事項を確認すると、要件がわかると思います。
このようにデジタルのものを含めた標本等の送付にかかる条件が緩和され、病理診断の委託が容易になりました(診療情報提供書の病理版と言えるような、別紙44(厚生労働省近畿厚生局のリンクより、エクセルファイルです)の提出が必須ではありますが)。
一方、受託側は、病理診断管理加算の届け出を行っており、特定機能病院、臨床研修指定病院、へき地医療拠点病院の機能を備えた医療機関で病理診断科を標榜していること、病理診断の経験を7年以上有する常勤病理医が1名以上いること、同一の者が開設する衛生検査所から受け取る標本割合が全体の8割以下であることなどが要件です。
よって現在の診療報酬では、委託側が標本作製するのは必須ではありませんのでバツです。
I-36 組織診断料の算定について
I-36 組織診断の実施において,診療報酬上の病理診断料(組織診断料)は,実際の診断回数に関わらず,1 患者に月 1 回のみ算定が可能である。
正解はマルです。組織診断料、細胞診断料ともに月一回の算定で、それぞれ520点、200点です。胃カメラやって大腸カメラやって、それぞれで生検して診断しても、一方でしか算定できません。子宮頚部と体部内膜の細胞診をやっても、400点とはならず200点です。2022年のI-34でも触れていますのでご確認ください。
I-37 病理診断管理加算について
I-37 病理診断管理加算 1 では,専ら病理診断を担当した経験を 7 年以上有する常勤の医師 1 名以上が配属されていることが施設基準の要件の一つである。
常勤病理医がいることで算定できる加算について整理しておきましょう。よく問われています。
病理診断加算1:組織診断120点、細胞診断60点(病理診断を専ら担当する常勤の医師が1名以上、担当経験5年以上)
病理診断加算2:組織診断320点、細胞診断160点(病理診断を専ら担当する常勤の医師が2名以上、それぞれ、担当経験7年以上と5年以上)
ほか、悪性腫瘍病理組織標本加算(原発性悪性腫瘍の手術検体の診断を行った場合は、悪性腫瘍病理組織標本加算として150点を加算する(算定要件:病理診断科を標榜、専ら病理診断を担当した経験を7年以上有する医師が1名以上いること)。)があります。
診療報酬関連の問題は正答率が低めで推移している
2021年では診療報酬に関する問題が3つ出題されていました。通常のI型問題の正答率はおおむね80%以上ですが、診療報酬関連は正答率が一段階下がっています。専門医試験を受ける段階でコストを意識する立場にないのが原因と思いますが、どこにアクセスすれば情報が得られるのか、これまでとの違いはなにかを意識して整理しておきましょう。
Take home messages
保険医療機関間の連携による病理診断に際し、委託側で標本作製できる体制は不要である
組織診断料および細胞診断料の算定は月一回だけである
病理診断加算1は、5年以上の常勤病理医1名が、加算2は7年以上1名と5年以上1名が必要
診療報酬改定は2年毎に行われています(次は令和6年です)
これまでの改定で、「病理診断は保険医療機関で行う」という病理学会の主張が反映されてきました。デジタルパソロジーについても大枠はすでにできています。
そして、今後の診療報酬改定のテーマとして悪性腫瘍の遺伝子変異検索の重要性が高まっています。病理診断に際し遺伝子変異検索が行われた場合、現在の診療報酬ではそれを算定できません。今後はそれについて要望をしていくようです。病理学会が令和5年4月に行動指針をたてていいます。令和6年度以降の診療報酬改定の動向をチェックしておきましょう。