はじめに
ニューモシスチス肺炎(115A37)に関連して、AIDS指標疾患にサイトメガロウイルス肺炎があります。医師国家試験でも107E46, 111G52にサイトメガロウイルス肺炎の組織像が出題されています。
ニューモシスチス肺炎と同様に、日和見感染症が起きうる患者(担癌状態、移植後状態、免疫抑制状態、リンパ球数低値)に、DADの様相を呈する疾患です。ウイルス感染症なのである程度特徴のある形態がHE染色でもみてとれますので、確認していきましょう。
サイトメガロウイルス肺炎の組織像
剖検例です。肺胞腔を裏打ちするように、ピンク色のべったりとした構造、硝子膜形成を伴うびまん性肺胞傷害の像です。その原因をみていきましょう。
こっちを見ている細胞がいます(なんのこっちゃ)。
マル囲みの細胞です。大型核を有しています。核小体のような大きな円形構造物が核内にあります。ほか、肺胞上皮の剥離もみられます。
同部の免疫染色(CMV)を見ていきましょう。下のマル囲みはCMV感染細胞ではないのか、あるいは薄切で面が変わってしまったかもしれません。いずれ茶色く染まるCMV陽性細胞が確認できました。
別視野の拡大を上げたところを見ていきましょう。
こっちを見ている細胞がいます(2回目)。所見は同様ですが拡大を上げました。
全く同一の面ではありませんが、CMVの免疫染色です。茶色い細胞がCMV陽性細胞です。
国家試験ではHE染色のみが提示されることが多く、形態での診断が求められます。実臨床では、形態からサイトメガロウイルス感染症を疑い、免疫染色で確認するのが望ましいでしょう。
病理医になったらCMVとニューモシスチスの重感染に注意する
注意しなければならないのが、サイトメガロウイルスとニューモシスチス肺炎との重感染です。どっちか見つけて満足してしまわないようにしましょう。剖検例でDADをみかけたら、どこかの切片(作製した肺全部でやると指導医と技師に怒られます)でGram, Grocott, CMVの検索をひと通りしておくことをおすすめします。
Take home messages
担癌状態、移植後状態、免疫抑制状態、リンパ球数低値などのキーワードをみかけたら、日和見感染症を想起しよう
肺の日和見感染症の代表は、ニューモシスチス肺炎とCMV肺炎
DADを呈する肺で、大型核を有する細胞がみられたときはサイトメガロウイルス肺炎を考慮する
以下は専攻医向け
所見がないからといってCMV肺炎を安易に否定してはいけない
サイトメガロウイルス肺炎をみつけて満足しない(ニューモシスチス肺炎との合併に注意)