マグロの美味しい解凍方法を知っていますか?
冷凍食品はとても身近な存在です。冷凍庫に入れることで、鮮度を保持したまま、食品を長期間保管することが出来ます。ふるさと納税なんかでご当地の食品を取り寄せる機会も増えてきたのではないでしょうか。ではその、美味しさをキープしたまま冷凍された食品を、美味しくいただく(解凍する)にはどのようにしたらよいのでしょうか。
マグロで診断プロセスを体験する?!
スーパーで美味しいお刺身を選べるようになる、冷凍刺身を美味しく解凍できるようになる、ではなくて(もちろんそれらの目標にも到達できると思いますが)、「マグロの解凍方法の違いによる組織変化」を題材に病理診断プロセスをなぞり体験してみましょうという趣旨で、前回のワークショップを展示バージョンに調整し、2025年11月2日(日)に岩手医科大学の医大祭(Xのリンク)に出展してきました。食材の観察から、人体の病理へ橋渡しする試みです。
さて、準備したマグロの調整方法は、1. 生のまま、家庭用冷凍庫で冷凍後に、2. 冷蔵庫内で約半日かけてゆっくり解凍、3.ラップにくるみジッパーバッグにいれ密閉した状態で水道水で流水解凍(約30分)、4.家庭用電子レンジの解凍モード(200W) で様子を見ながら解凍(失敗バージョン、成功バージョンあり)の大きく4パターンです。みなさんは、どの解凍方法が美味しいと思いますか?展示では、シール投票を最初に行っています。
良い解凍方法の事前予想は、流水>冷蔵庫>レンジであった

隅っこで展示していましたが、一日10-16時の展示で、なんと168のシール投票をいただきました。事前の予想では、流水解凍が一番多かったです。流水解凍も冷蔵庫解凍も、どうしてそれが美味しいと思いましたか?とお聞きしますと、冷凍食品を購入した際に、おすすめの解凍方法が記載されていたので、といった回答が多かったように思います。レンジ解凍も少数ながら支持がありました。
実際の展示資料


横長のホワイトボードの表裏を使って、表に問題、裏に解説としました。ワークショップのときと同様、家庭で簡便に解凍するなら流水解凍が最もよく、上手に解凍できるならレンジ解凍も良い方法です(お刺身でレンジ解凍に失敗するとショックを受けてしまいますが⋯)。
マクロ写真(肉眼)ではレンジ失敗を見破るのは容易いだろうと想像しますが、顕微鏡で見たミクロ写真ではレンジ失敗はパッと見ではわかりにくいかもしれません。また、マクロ写真では生、冷蔵庫、流水の違いは軽微にみえるかもしれませんが、ミクロ写真では筋肉のボロボロ具合や筋肉同士の間のスカスカ具合などの違いが現れていて、個性豊か(?)です。見た目(肉眼)でわかりやすいもの、わかりにくいものと、顕微鏡でわかりやすいもの、わかりにくいものがそれぞれありますね。
冷凍解凍によって細胞にダメージを受けるため、そのダメージを最小限にするには、急速解凍がよさそうです。今回はマイナス20度の家庭用冷凍庫で冷凍しましたが、温度を変えて冷凍(マイナス50度くらいのドライアイス、マイナス80度のディープフリーザー、液体窒素など)で検討してみるのも面白いでしょう。
以上、解凍時に失敗によるリスクを無視するのであれば、レンジ解凍が最も美味しいと言えるでしょう。失敗を回避したいなら流水解凍がよさそうですね。試してはいませんが、組織ダメージを好ましいといえる状況もあるかもしれません。細胞がぼろぼろになることで、煮込み料理などでは味が染み込みやすくなったりするかもしれません。
さて、前回のワークショップ実施後のアンケートでは、他の食材でもみてみたい、これが実際の人体における病理診断ではどうなっているのか知りたい、といったような興味や関心の声が聞かれました。それにお応えするべく、展示資料を増やしています。
マグロのお刺身→筋肉→心筋病理!
マグロの赤身は筋肉(横紋筋)です。人間の横紋筋は自由に動かすことのできる手足の筋肉がわかりやすいと思います(随意筋、骨格筋、横紋筋)。自由に動かすことのできない筋肉の一例に、心臓の筋肉(心筋)があります。筋肉の疾患として、心筋疾患(好酸球性心筋炎、心アミロイドーシス、陳旧性心筋梗塞)を提示しました。実際にひとの心筋疾患をみていきましょう。



形態の変化から異常を読み取り、病気の名前をつける
心筋疾患を3つとりあげました。病理では、形態の変化を見ることで、どこで何が起きているかをみることができます。それに応じて診断を行う(病気の名前をつける)ことで、病気の正体がわかることで次の診療方針が定まってきます(治療に結びついていく)。複数の疾患で似たような形態の変化が起きる場合もままあるため、病名と形態変化が一対一対応しない場合もあるため注意が必要ですが、病理は確かに医療の根幹の一部を担っています。

