問題文と選択肢
大動脈弁に付着する腫瘍を切除した。ホルマリン固定後の肉眼像(検体を水中で撮影した)を示す。診断はどれか。
a. 心臓粘液腫
b. 脂肪腫
c. 乳頭状線維弾性腫
d. 血管肉腫
e. 悪性腫瘍の転移
はじめに
医師国家試験のガイドラインでは、心臓腫瘍で出題されるのは、心臓粘液腫と悪性腫瘍の転移のみです。原発性心臓腫瘍は心臓粘液腫のみです。一方、病理専門医試験を受ける段階で経験すべき疾患のうち、心臓腫瘍としては、心臓粘液腫、乳頭状線維弾性腫、横紋筋腫、心臓肉腫があります。今回の病変は医師国家試験では出題されることがありませんので、いきなり肉眼像を提示したいと思います。
肉眼像解説と診断
肉眼像が特徴的な病変です。イソギンチャクと形容される、先細り状の多数の白い突起を無数に有しています。大動脈弁によく発生します。塞栓源となる場合があるため、発見されると手術で摘出されます。この肉眼像をみて、c. 乳頭状線維弾性腫 (papillary fibroelastoma) と診断したいです。
組織像の提示
全体像です。平面で標本を作る都合上、肉眼像のほうが見やすいと思われます。
乳頭状構造の拡大です。内皮細胞が被覆しているのがわかります。構成細胞の異型はありません。
補足
病名が類似した疾患で、高齢女性の肩甲骨下部に発生する弾性線維腫 (elastofibroma) があります。名前こそ部分的に類似していますが、臓器と組織像は全く異なる病変です。しかしながら、試験本番では十分鑑別診断となりうるでしょう。
Take home message
イソギンチャクと形容される特徴的な肉眼像と疾患名(乳頭状線維弾性腫)をセットで覚える