お家で出来る標本作製 ~5,000円ではじめる標本づくりと顕微鏡観察~

準備するもの

準備するもの、ハンディ顕微鏡、白点病薬、洗瓶、染色液を滴下する容器、染色バット、スライドガラス

・観察用の顕微鏡(まずは虫眼鏡でも代用可能)

ハンディ顕微鏡と検索すると、1,500円から2,500円くらいの手持ちサイズの簡易的な顕微鏡がヒットします。今回はレイメイ藤井のハンディ顕微鏡 RXT1144Jを使用しました。アマゾンでは2,555円でした(2026年9月11日時点)。倍率は100-250倍と書いてありますが、高倍率にするととても観察しにくいです(ブレやレンズの品質など)。100倍くらいが適切な拡大倍率だと思います。もっと手軽に試してみたい場合は、虫眼鏡を試してみるのはいかがでしょうか。細かい構造が意外とよく見えます。

・染色液

金魚の白点病薬を使用します。成分表にメチレンブルーと記載があるものを使いましょう。ニチドウのメチレンブルー水溶液200 mLを購入しました。ヨドバシで1,200円でした。10-100倍に希釈して使います。そうすると、2-20 L分の染色液が使える計算になるので、一生分といっても嘘ではないですね。本来の用途とは異なる使い方ですのでご留意ください。目や口に入らないようにする、手で直接触れない(手袋着用)、普段飲食に使っている容器に入れない、などに気をつければよいかと思います。加えて気をつけるべきなのは、この青が衣服や家具につくとなかなか取れませんので、汚れても構わない格好や、周囲の環境をよく整えて染色に臨みましょう(ゴミ袋のような大きなビニールを敷いた上に新聞紙を広げたり、こぼれたらすぐふけるようにぞうきんを用意したり)。また、子どもが行う場合は大人が付き添ってください。

・スライドガラス(プラバンやクリアファイルで代用可能)

見たいものを載せるガラスです。アマゾンなどでスライドガラスと検索すると、600-700円くらいで100枚くらい手に入ります。簡易的なものなので、届いた時点でガラスがいくつか割れていたり、端っこが鋭利になっている場合があります。怪我に注意してください。形から入りたいひとは、松浪硝子工業のスライドグラスがよいでしょう。安価なものだと1,000円くらいで100枚入りです。

でも実は、簡易的な標本作製をする場合、スライドガラスは不要です。クリアファイルをそれっぽい長方形(縦2-3 cm, 横5-7 cm)に切り取ってその上に見たいものを載せればよいのです。クリアファイルが多少曇っていても問題ありません。強いて言えば、プラバンなどちょっと硬さがあるもののほうが扱いやすいかもしれません。今回は安価なガラスとクリアファイルを使いました。クリアファイルでも問題なく観察できています。

クリアファイルを小さく切ってスライドガラスに代用する

・染色液をポタポタと滴下するスポイトや、染色液を洗い流す洗瓶(せんびん)

目薬の容器のようなものがおすすめです。スポイトもいいですが、染色液を容れる容器を別途用意する必要があります。100円均一のトラベルコーナーや化粧品コーナーで見つけることが出来ます。洗瓶は同じく100円均一のガーデニングコーナーを見に行きましょう。

・染色作業をするカゴ

水を使いますので、バットと、ガラスの上に直接液体をかけたり上から水をかけてすすいだりするので、すのこのようなガラスを乗せる網や橋渡し状の構造があるとよいです。浅めの水切りかごがいい感じです。あるいは容器内に短い突っ張り棒や割り箸を2本渡したりするのもよいでしょう。これも100円均一で手に入ります。

・試料(みたいもの)

今回は玉ねぎの薄い皮を使いました。

玉ねぎの薄皮は、薄いので刃物で薄く切る必要がない。怪我の心配がないので初回の標本作製にとてもおすすめです。

これくらい薄いと、染色してすぐ観察することが出来ます。同じように試料の用意に手間がかからないものとしては、綿棒を口の中に入れほっぺの内側をグリグリとこすった後にガラスに綿棒を塗りつけると、自分のほっぺたの内側の細胞(口腔内の重層扁平上皮)を観察することが出来ます。このあたりが初回観察には適しているかなと思います。染色作業に慣れたら、違うものの観察に挑戦するとよいでしょう。たとえば、和梨やセロリなんかもおすすめです(後述)。

・ピンセット

小さい試料を取り回すのに使います。100円均一で買いましょう。

染色手順

1. 用具の準備、環境の整備、手順の確認をする

散らかっていないきれいな環境で、汚れても良い服装で望みましょう。染色手順も、何度かシミュレーションしてみるとよいでしょう。

2.クリアファイル(スライドガラス)に玉ねぎの薄皮をのせる

3.染色液を滴下する(5分くらい待つ)

試料をメチレンブルーで染色する。試料が埋もれるくらいたっぷりの染色液をのせよう。
綿棒を使って自分の頬の内側のをこすったものをスライドガラスにこすりつけると、自分のほっぺたの内側の細胞(口腔粘膜の重層扁平上皮)が確認できる

4.水ですすぐ

クリアファイルと試料は接着しているわけではないので、試料に直接かけると試料がどこかにいってしまいます。試料がのっていない、クリアファイルの隅からやさしく水を滴下してすすぎましょう。2,3回すすぎます。

メチレンブルーを水で洗い流す。試料に直接水をかけるのではなく、試料が乗っていない部分からそっと水を流しかけすすごう。

5.余分な水分を拭き取って、観察する

6.玉ねぎの薄皮では、細胞壁という細胞を区画する構造があります。細胞壁による細胞と細胞の境界が青くみえて、細胞の中にある核という小さい丸が青く染まります。

細胞の境界(細胞壁)が青く区画されていて、その中に丸い核がみえる。

7.番外

染める前の薄皮を観察してみても面白いです。似たような構造は見えますが、染色したときほど綺麗には見えません。染色すると、構造ははっきり見えてきます。

お家で標本作製+顕微鏡観察にかかった合計金額は?

顕微鏡2,555円、金魚の白点病薬 1,200円、スライドガラスの代用としてクリアファイル110円、染色液の滴下容器110円、洗瓶110円、染色かご110円、ピンセット110円、試料は玉ねぎ1個100円しないはずです。あるいは自分のほっぺたの内側の細胞なら、綿棒1本でよいです(100円均一で買えるから110円としましょうか)。

以上、2,555+1,200+110×4+試料代(玉ねぎ1個を100円、綿棒を110円)として、どちらも観察するとしても4,405円です。5,000円を切ることが出来ました。

顕微鏡をより安価なものや虫眼鏡に変更したり、フリマサイトで手に入れたりすればもっと初期投資を抑えることが出来るかもしれません。白点病薬もネットショッピングじゃなくてホームセンターで買えばもっと安いはずです。

ミクロの世界へようこそ!色んなものを顕微鏡で見てみよう(関連書籍の紹介)

顕微鏡で見ることが出来るものは他にもたくさんあります。顕微鏡で見るミクロの世界(山村紳一郎著)という本が、色んなものを顕微鏡で見るヒントをくれます(リンクはアマゾン)。今回紹介した顕微鏡は、薄く切って染色したものだけを観察するのではなく、厚みのある立体的なものの表面を観察することも出来ます(もっと拡大できる虫眼鏡のイメージ)。食器洗い用のスポンジやタオル、紙に印刷された文字、硬貨やお札などなど、観察するとミクロの世界が広がっています。観察してみたいなと思ったものをどんどん見てみよう。

初回お試し時に準備しなくて良いもの(色々やりたくなったら用意するもの)

1. カミソリ

梨やセロリのような厚みのあるものは顕微鏡の光を通さないので、光が透けるくらいの薄さに切る(薄切)する必要があります。フェザーのカミソリを使用しました(ヨドバシで10枚380円でした)。片刃と両刃があります。両刃は二倍使えてラッキー!と思うかもしれませんが、実際に使おうとしようものなら、これはどこを持てば手を切らずに済むんだ?とフリーズしてしまいます。初回は片刃を強くおすすめします。それと、とても切れる刃です。大人の人にやってもらうようにしましょう。薄く切るコツは、薄く切れたなあ!と思うまで何回もやることです。いつか会心の一撃のめちゃめちゃ薄い一枚が作れます。あとは、刃を押したり引いたりのギコギコしない(一方向に押すか引く、引くのがやりやすいと思います)のも大事です。顕微鏡で見れる範囲は広くないので、5 mmから1 cm角もあれば十分です。

2. 消毒用エタノール

通常の標本作製過程では、最初に試料を固定(すごく大雑把に言うと腐らないようにする)します。消毒用エタノールはだいたい65-80%くらいの濃度だと思います。エタノール固定をすると色のノリがある程度良くなるので、慣れてきたら試してみてもいいかもしれません。その場合は、ガラスに試料を載せた後に、エタノール固定(5分くらい)、水洗、メチレンブルー染色、水洗、観察とすればよいです。いきなり水で洗うと表面張力が変化するので、水で薄めた消毒用エタノールも用意して、段階的に薄めていくのが良いです。そこまでしても見え方に劇的な違いは現れにくいですし、今回の方法で出来上がった標本を長期間保存するのは難しいので、簡易観察なら固定のステップは省略しても全く問題ありません。

3. シリンジ

薄切試料の空気抜き(特に植物)に使います。植物は中空構造があって中に空気が入り込みます。顕微鏡で見ると気泡が大きく見えます。気泡が目立たない場所を観察すればいいのですが、気泡が気になるひとは以下の手順を試してください。シリンジは100円均一の化粧品コーナーにあります。

薄切試料を水の入ったシリンジに入れ、内筒(黒いゴムの付いた押し手)をそっと装着し、先端を上に向け空気を一定程度そっと追い出したのちに、先端部を指で塞いで、内筒を引いて陰圧をかける、この一連の作業で気泡が追い出され水に置換されます。

まとめ

・5,000円以内の予算で、自分でメチレンブルー染色標本を作って顕微鏡観察が出来る!

・メチレンブルー染色液の取り扱いに注意(作業環境を整えてから行う、汚れてもいい環境で行う)

・玉ねぎの薄皮以外にも、色んなものを染めて顕微鏡で観察してみよう!

番外の番外

・和梨のジャリジャリを可視化する(梨の皮をむいた後に、食べる部分をカミソリで薄く切って、染色した。放射状の濃い青の中心がジャリジャリに相当するだろう)

和梨のメチレンブルー染色。石細胞が濃い青に見える。梨のジャリジャリした食感の正体である。中心がやや透明に抜けた丸や楕円は空気(気泡)である。

・セロリの根本を色水につけて(クチナシの食紅を使いました)、メチレンブルーとの二重染色をした。植物の水の通り道が、目でも顕微鏡でも確認できる。

セロリの色水給水実験。クチナシの色素を用いた。一昼夜色水を吸わせると、赤い点が規則的に並ぶのが確認できる。葉側にいくと赤が薄くなっていく。
クチナシ色水を吸わせたあとに、メチレンブルーで染色した。水の通り道が赤くなっていることがわかる。